映画レビュー/概要

659本目 透明人間/The Invisible Man
2020年
監督:リー・ワネル
主演:エリザベス・モス
評価:★★★★

あらすじ
恋人の恐ろしさに恐怖し、彼の豪邸から逃走したセシリア。
逃亡後、恋人が自殺したとの連絡を受けるが、それでもセシリアはその事実を受け入れられなかった。

それと同時に、セシリアの周辺で奇妙な出来事が起き始める……。
透明人間が登場する作品といえば、やっぱり忘れられないのは『インビジブル』ですよね。あっちは狂気に堕ちていくケビン・ベーコンの演技が最高な作品でしたが、そちらとはベクトルがちょっと違います。

透明人間という古来からあるキャラクターを、現代テイストでここまで恐ろしく仕上げたリー・ワネルは本当に天才だと思います。

彼といえば、代表作に『ソウ』や『死霊館』シリーズ等が挙がる人も多いと思いますが、個人的には彼の作品の中でトップクラスに面白い作品に挙げてもいいくらい楽しい作品でした。

物語的には、そう楽観的に楽しいと言えるものではありませんでしたが……。

本当に怖いのは

何が怖いって、最初から追われる主人公を見ていることすら怖いんですよね。
束縛っていうレベルじゃない彼から追われるセシリアを見ていて、こっちも閉塞感を感じるくらいには怖いです。

幽霊云々よりも、この設定がそもそも怖いっていう起点からスタートしており、いつ明るく展開するんだろうっていうのを2時間見させられるわけです。

最後はリー・ワネルらしいオチもついており、「映画を観た」という楽しさを心底味わえるのは凄いです。
後味も悪いはずなのに、それでも映像と物語の楽しさをここまで感じさせてくれるのは流石。

足が浮くレベル

映画の演出的な視点でいきましょう。
今作の恐ろしいところは、
・死んだ幽霊?
・生きているけど見えない人間?
・そもそも、本当に死んだ夫?
・というか、主人公が精神的に参っていて見えないものが見えている?
と、何が本当なのかわからない作りになっています。

そこは話が進んでいけばわかるところですが、一体何が本当なのかという疑心暗鬼になる点もまた怖くなる要素の1つですね。

だからこそ、カメラワークが”そこに誰か居そう”という恐怖心を常に煽って来て、いつ何が飛び出てくるかわからない怖さを味わうことになります。
最初から「貞子が出てくる」とか、「フレディが飛び出してくる」とかわかっていればある程度覚悟はできますが、”見えない恐怖”による演出は最高です。

とあるシーンでその”何か”と相対するシーンがあるのですが、劇場で観た鳴海はその怖さに足が浮きました。
普通に座ってる席で、腰から下が浮くって中々なもんですよ。
今までホラー映画は劇場で様々に鑑賞しましたが、それ程心臓に負荷がかかったのは初めてでした。

とまぁ、それくらい怖さを楽しめる映画になっておりますので、未見の方は是非ともご覧あれ。





「そこに”誰か”座っている。  --セシリア・カス」

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