映画レビュー/概要

787本目 秒速5センチメートル
2007年
監督:新海誠
主演:水橋研二
音楽:天門


目次
  • あらすじ
  • 評価:★★★★
  • 桜の花の落ちるスピード


  • あらすじ

    東京のとある小学校に通う遠野貴樹と篠原明里。
    どこか似通っていた2人は自然と交流が深まり、一緒の時間を過ごすことが多かった2人だが、明里の親の転勤により卒業後離れ離れになってしまう。

    中学1年になり、今度は貴樹が東京を離れることになり、2人の距離は更に離れることになってしまうのだが……。

    評価:★★★★

    新作公開記念にIMAX上映していただけたお陰で、久しぶりにこの作品に触れることができました。

    この映画を初鑑賞した時と違った感想を抱いてしまったことを不思議に思いましたが、その中身を思うとゾッとしてしまったというのは後ほど記述します。

    今作を勧められた際、友人から聞いていたのはとにかくめちゃくちゃイラストがキレイなアニメである点。
    そして、エンディングがとてつもなくせつなくなるという2点でした。

    またまたそんな大げさな、とか思いましたが、あまりにもせつない。
    アニメなんだからもっと幸せになってもいいだろうと思いましたし、ハッピーエンド嫌いなのかこの監督はと当時思ったものですが、どうやら『君の名は。』を観る限りそればかりを創っているわけではないと知ったのは8年経ってからでした。
    どうしてこのような結末を迎えることになったのか、蓋を開ける楽しさと合わせてストーリーの甘酸っぱさ。
    3話構成からなるこの作品は、小学~中学時代にあった甘酸っぱい青春話が2話と、最後に突きつけられる”現実”こそ至高な1話。

    今やスマホが普通な時代ではありえない展開だからこそ、そのもどかしさがまた心を締め付ける要素になっているのがたまらないんですよね。

    ただハッピーエンドになればいいと思う人には不向きですが、心をかき乱されながら観る人には大変お得な作品かと。

    桜の花の落ちるスピード

    高校時代の鳴海が観た時は、シンプルに悲しくなりました。
    あれだけ想っていた子が気づけば別の子と結婚をして、最後に一言も会話をすることなく話が終わってしまう。
    悲しい、なんて悲しいんだこの作品は……。でもエンディングの曲は最高だし、イラストもきれいすぎる。

    なーんてことを感じたのはかれこれ10年以上前のお話でございます。
    さて、2022年になりこの作品を観た鳴海もすっかり私生活が変わり……あれ、未だに格ゲーして映画を観て文字を打つという行為は変わらないので本当に変わったのか?という自分へのツッコミはさておき、社会人経験も気づけば10年。
    いやはや、あっという間ですな人生はなんてすぐに厄介な先輩面するセリフなんぞを吐く大人になってしまいましたが、そんな鳴海が久しぶりにこの作品を劇場でじっくり観ると、驚くべきことに感想の中身が変わってしまっておりました。

    変わらなかった点は、1,2話目が甘酸っぱいお話であるという点。
    ここについては以前の感想と変わらず、どちらかというとエンディングを知っているからこそ物悲しいなぁなんて思いました。
    ですが、ここで厳密に言えば感想は一部変わっていたことに気づきました。

    木の下で交わした口づけ。
    あのシーンの意味を高校時代は深く考えちゃ居なかったんですが、あの口づけと”手紙を渡す”という行為が無かった点。
    そう、登場人物達が言う通りあの口づけでまるで世界が変わってしまったという言葉の重みを知らなかったのです。

    そして3話目。
    気づけば社畜生活ばかりをしている貴樹が、昔の恋愛云々なんていうこととは程遠い世界になり、最初に考えていた思いもすっかり忘れて仕事をするだけの日々。
    酒にたばこ、やけになりたくなるような生活を続けた果てに会社を辞める。
    この一連の流れになんら違和感を感じなくなってしまったのは社会人経験を積んだからこそだと思います。
    昔思っていた気持ちよりも仕事に必死で心の余裕なんてありゃしない。
    でも、そんな生活がずっと続くわけではなく糸が切れてしまったかのように会社を辞める。

    昔大事にしていた想いがふと我に帰るきっかけとなり、彼は過去にけじめをつけて前に歩き出す。
    あれ、これって、めっちゃハッピーエンドじゃないですか???
    昔はそんなこと微塵も思わなかったですが、明里と結婚するということが確かにハッピーエンドかもしれませんが、普通に考えて初恋の相手と結婚することが必ずしも幸せとは限らないですよね?
    事実、明里は幸せな道を歩み始めたわけですし、貴樹だってあの踏切で振り返らない=過去ではなく未来へと歩みを進めることにしたということなので。

    この見方ができるようになったのは、ほんの少し作品を観る上での視点が増えたと言えば聞こえの良い仕事をする大人の悲しき納得感からくるものかもしれません。

    やたら長く語ってしまいましたが、この作品を皆さんはどう観られましたか?
    鳴海としてはちょっと心に棘が刺さりつつハッピーエンドだなぁと言えるくらいにはなりました。





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