358本目 ザ・フライ/将来、転移装置が出来ても絶対に使いたくないと思った映画
映画レビュー/概要
358本目 ザ・フライ/The Fly1986年
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
主演:ジェフ・ゴールドブラム
評価:★★★★★
あらすじ
物質転送装置を作った天才学者のセス・ブランドル。
後に恋人となる女性とその上司の関係に嫉妬したブランドルは、泥酔したまま自身が転移装置へ入り込み転送される。
だがその転移装置には、一匹の蝿が混じっており……。
SFホラーの伝説
SF界の伝説と言えばいくつも頭に浮かんでくることでしょうが、この『ザ・フライ』も欠かせない作品です。元々は『蝿』という1957年の小説が原作で、1958年にも『ハエ男の恐怖』で映画化されたことがあるものです。
今回は実写映画化が二度目ですが、ほとんどの人の記憶で痛烈に残っているのはおそらくこちらでしょう。
転移装置というSF好きにはたまらない要素がありつつ、ラストの生々しい描写、徐々に身体が変異してしまう恐怖、というホラー要素がかけ合わさり、歴史に残るSF映画が誕生したわけです。
鳴海が初鑑賞したのはそんなに昔のことではなく、ごく最近になってからでした(この記事を記載する2年前を”ごく最近”という言葉を使うことに抵抗が出てくる年になってしまいました。人生とはかくも恐ろしき哉)。
幾多ものSF映画を観ているため、今更衝撃を味わうような体験なんてありゃしないでしょう、くらいの気持ちで観ていたのですが、多大なショックを受けるというフラグ回収っぷりは、スプラッター映画序盤に殺される若者のようでした。
転移装置×ハエ
例え転送装置がこの世に生まれたとしても、一生使わないようにしようと思ったきっかけがこの映画です。天才学者が開発した転移装置の中に蝿が混ざっていたせいで、身体に蝿のDNAが混ざってしまうというとんでもないことにしかならないことを証明してくれたので。
映画に出てくる天才は余計なことをやらかすなんてのは、今までの記事でもどこかに記載したかもしれませんが、この映画でも例外なくやらかしてしまうわけです。
恋人とのことを気にしなければ、他人に教えたがらなければ……。
とまぁ、色んな要素がおり混ざって、こんなことになった結末を憂いてしまうわけですが、こういう気持ちになるのって別にブランドル以外の人間にも十分に有りえますよね。
ヤケになって酒を飲む人も居るし、自分の功績を認めてほしいという気持ちは誰が持っても不思議じゃありません。
ブランドル・フライは、そういう人間の”性”を体現した結果あの形になったのだとすると、グロいと思ったり醜いと思うのは自分の生き写しになってしまうかもしれません。
トラウマ確定のラスト
とかなんとか言ったって、この最後は絶対に脳裏に焼付きます。ただ怖い蝿人間が出てくるだけだったらこんなに怖い思いをすることはなかったのに、最後の最後にさらなる事故で機械とも融合。
「殺してくれ……」と言わんばかりに銃口を向けさせるあのシーンは一生忘れられません。
最後の最後にヴェロニカは泣き崩れてエンド。
なんとも報われない映画です……。
でも、SFホラーとしての不気味さ、醜さ、グロテスクさは詰まっているので、この手のジャンルが好きな人は抑えてほしい一本。
「背中の毛は人間のものじゃないわ……。 --ヴェロニカ・クエイフ」
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